山本愛子

EXHIBITION

あわいのはた

私はここ数年間、 アジアを中心にいくつもの地域を移動しながら 制作をしてきましたが、 昨年からは横須賀の自然豊かな土地を拠点に しています。 それは偶然にも、 新型コロナウイルスが国内でも猛威を 振るい始めた頃でした。
以降、人々の生活は 「国境」 や 「県境」で 分断されることが当たり前になってしまったように感じています。

一方で、 染色には複数の境界を超えていく力があることに気付かさ れます。
ここに展示した 「あわいのはた」は、スタジオの近辺で採取 した野草、畑で育てた藍、 国内外で収集した植物などを原料に、 絹布を 染めてつくりました。
現実には隣あうことのなかった植物たちが、 蚕の吐いた糸の上で色として混ざり合っているのです。
その色を受け 止める絹布は、動物性のタンパク質から出来ており、人間の皮膚に とても近い構造をしています。
骨壺までもが布に包まれる様子を見て いると、布が人間にとっていかに大切な第二の皮膚であるかが想像で きます。

国境を超えて生息する草木、あの世とこの世を繋ぐ絹。
染色を通じ て、地理や時空すら超えていくあわい=間の存在が見え隠れするのです。

国旗によって国境が生まれるのならば、 《あわいのはた》 は人間が 規定したあらゆる境界のあわいを示すもの。
様々な分断が生じる現代に、 私は祈るように 《あわいのはた》 を染めていました。
​Credit:BankART1929

『Under 35 2021』

@ BankART KAIKO(神奈川) 2021

『Under 35 2021』

@ BankART KAIKO(Kanagawa, Japan)2021

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